序
今まで愛用してきたArai RAPIDE-IRがいよいよ限界になったので、新しいヘルメットを用意することにした。
いくつか有力な候補は存在したが、そもそもRAPIDE-IRが古いヘルメットであることに加え、RAPIDE-IR自体がその時代としては保守的な設計である部分もあるため、現代のヘルメットとは乖離が大きく判断しかねる部分ある。 そこで、安価で現代的なヘルメットとして、Daytona DN-012SVを購入した。これを新たなベンチマークとする計画だ。
なお、RAPIDE-IRは気に入っているのではなく、私は非常に多数の問題のあるヘルメットだと考えている。 そして、今に至るまでその改善が見られなかったために今回Araiを離れて別メーカーを試している形だ。 私はArai以外のヘルメットの経験はない。
初見の印象
でかい。
単に空力部品で前後方向に大きいだけでなく、幅もでかい。全体的に巨大。Lとはちょっと思えないサイズ感。
パッドの厚みがものすごい。どう見てもこのパッドの厚みを収めるのに帽体が大きくなっている、もしくは帽体を埋めるために極厚のパッドを入れているという印象。
空力部品は結構でかい。 見た目はなかなかいかつくてかっこいいとは思うんだけど、大きいことに加えて見た目のバランスもあまり良くはない。 SHOEIのように整った印象とはかなり異なっている。 001なんかはもう少し端正なんだけどな。
重量は割とある。
被った印象
頬の押され具合が強い。
001や003と比べて明らかにタイトだが、全体的にタイトなのではなく、チークパッドの圧が強い。 同じLサイズで比べると、GT-Air3やZ-9よりもずっと頬が押され、頬がタイトなSHUMAなどよりもさらにタイト。 頬が歯に当たる。
圧が強いのは頬なのだけれど、1時間ほどで顎骨に痛みが出た。
上下方向の安定感がやや薄く、前後の傾きに適切な度合いが見いだしにくい。 ただ、かぶっている間にブレやすいということはない。
重さはかぶっても感じる。肩周りがちょっとしんどくなる。
空力スタビリティは明確に優れている。 Araiのようにゆすられることもなく、ネイキッドバイクでも上体が持っていかれるようなことがない。
一方、風切音はゴォォという音がかなりする。 アライと比べれば難聴になるとかサイレンがきこえないみたいなことがないのでマシだが、音自体はかなり大きい。
ベンチレーションはまあまあ優れている。 ラパイドIRよりはいくらか良い。
視界は驚くほど優れている。 クリアシールドを使っていると、シールドが下がっているのかわからないくらい。 視界自体が広く、ヘルメットに塞がれている感じがない。
気になるところ
縫製がかなり甘く、ほつれていたり、そもそも縫えていなかったりというのがかなり目立つ。
パッドはスナップで固定する方式なのだけど、むっちむちの極厚パッドの裏なのでめちゃくちゃ留めづらい。
さらにチンカーテンはチークパッドを固定するときに使っている差し込みにひっかけている形なので、チークパッドを外すと必然的にはずれてしまう。 取り付けも面倒。
さらにさらに、センターパッドは開口部のところに差し込む形なのだけど、ここはやわらかいパーツなので差し込むのめちゃくちゃ大変。
トータル、内装脱着がものすごくしんどい。 設計が非合理的で考えが足りない感じがする。
ヘルメットを置いたときに、ホムセンメットのような中身すっかすかなんじゃないかと思うような軽い音がする。 ちょっと不安になる。
アゴ紐の処理が問題。 ラチェット式なんだけど、詰めた先に余った紐の行き場がない。 一応、留められるようなゴム紐がついているのだけど、かなりゆるいので走行中にはずれてしまうこともあるし、被るたびにひっかけ直す必要がある。 それでも走行中にはずれることがあり、外れるとかなり暴れる。 「ラチェット式が楽」なんてことは全くないことを感じるけど、おそらくラチェット式なのが悪いのではなく、設計が悪いのだろう。
素性の発覚
内装を外したところ帽体に “H162-XXL” という刻印があった。
調べたところ、どうもこの帽体、中国メーカーのVCANのH162というヘルメットのものであるらしい。
うーん、そっくり。 スポイラーの形状が少し違うものの、ほぼ同じだ。 ちなみに、スポイラーは取り外し可能、かつ拡張も可能な部品になっている。
系列メーカーのOrigineからもETNAという名前で販売されている。
うーん、そっくり……
VCANとOrigineは共に上海のH&H Sports Protection系列。 H&HはOEM/ODMも引き受けているメーカー。
なんでXXLなんだ、については、そもそもH162はXXS〜XXLというサイズ展開ながら、シェルサイズは2種類。なので、大きい側のかなり広い範囲をXXL帽体でカバーする形になっている。
つまり、 デイトナ DN-012SVは中華ヘルメットVCAN H162のODM ということのようだ。
「非アジアンフィットを内装で無理矢理合わせた感じ」も当たっていた模様。
H162は定価が£129.99、最安は£85.99あたり。 ETNAは公式価格が€144.99。 DN-012SVは実売で1.2〜1.5万円あたりなので、まぁ多少安いと言えなくもないか…… ただし、H162やETNAはカラー展開やグラフィックモデルも豊富。
ちなみに、安価なカーボンヘルメットとして話題のDN-011RCはどうなのかというと、Origin GAMMAがとても似ている。
DN-011RCも中華ヘルメットODMなのでは…… うーん、こだわって開発とは……
総評
「安心の国産メーカー製」とか言っている人がいたけど、デイトナはヘルメット製造をやっているわけではないので当然そんなことはない。 モノとしては基本的にH&Hのものなので、中華ヘルメットとして考える必要がある。
実売価格まで考えると、元ネタと比べてマージンが乗っているような値段ではなく、お買い得寄り。 中華ヘルメットであることを問題視しないのなら、限られた予算の中では悪くはない選択肢ではあるだろう。 なお価格的に近いKOMINEのヘルメットはFASEED (Jiangyin Dafeima Automobile Technology)という中華メーカー製であるが、KOMINEは独自に性能試験もしているようだ。
012は実売価格がAmazonで1.2万円程度と非常に安い。 少なくともある程度の防御力や快適性があるヘルメットを選ぼうとした場合には、相当安い部類になる。 経済的理由で半ヘルやスモールジェットを選択しようとしている人が、「この値段だったらDN-012SVにしようかな」と考えるかもしれない。 だから、ある程度不満があったとしても、あるいはH&Hのヘルメットの保護性能を不足とみなしたとしても、割と明確にその価値を持っている。
だから、012は「安い割にはちゃんとした中華ヘルメット」だと見ればいい。 それに製品自体は中国メーカー製であっても、デイトナからパーツ供給があることはかなり大きい。
一方、011はそれなりに協力な競合のいる価格帯になってくるため、結構微妙。 カーボンヘルメットとしては安いが、011は別に猛烈に軽いわけでもなく、Lサイズであればサイズ自体が大きいのでむしろ重い。 カーボンヘルメットであることの明確なアドバンテージは限定的で、結構苦しいかもしれない。