はじめに
ヘッドフォンテストプレイリスト、ヘッドフォン/イヤフォンをテストするためのものではあるんだけど、最近は厳密な「評価」よりは自分の判断用になってきている。
version 3は2024年5月制作。
今回は「より分かりやすく」「良し悪しよりも最低限を満たしているかの確認のため」という方向性で。 品質評価もできるけど、どちらかというと合格できるかどうかを問う感じ。
KZ ZVXをリファレンスとして、「痛い!辛い!」となった曲で構成している。
プレイリスト
| # | タイトル | アーティスト |
|---|---|---|
| 1 | 夢のアリア (原神メインテーマ変奏曲) | Yu-Peng Chen, HOYO-MiX |
| 2 | 終焉のフィナーレ | Yu-Peng Chen, HOYO-MiX |
| 3 | 激流の如く | Yu-Peng Chen, HOYO-MiX |
| 4 | 迷子の街 | 竹井詩織里 |
| 5 | flow | school food punishment |
| 6 | ハマルの幸福 | 中恵光城 |
| 7 | SELENiTE | 中恵光城 |
| 8 | Golf | Cube-Ray |
| 9 | Lyin’ 2 Me (Instrumental Version) | RichaadEB |
| 10 | scent | Farhan Sarasin |
| 11 | 眠れない | MIMiNARI, 楠木 ともり |
| 12 | Lost Child (feat. 紫月) | Mysteka, 紫月 |
| 13 | 真夜中プライスレス | BRADIO |
| 14 | Hype (feat. Such) | PSYQUI, Such |
| 15 | Decay | PSYQUI |
選定理由
夢のアリア
男女のコーラス曲で、ヴォーカルに対する表現力の基本評価ができる。
難易度が高いというより、まずはヘッドフォンの基本スコアをつける感じ。
終焉のフィナーレ, 激流の如く
ダイナミクスのめちゃくちゃ広い交響曲。 原神の曲の中でも特にダイナミクスが広い。
厳密には「バトルの秘儀」のほうがダイナミクス広いんだけど、そうすると「風と異邦人」(アルバム)に偏ってしまうので「激流の如く」を採用。 原神は初期がクラシック的な交響曲色が強かったことがうかがえる部分。
迷子の街
竹井詩織里さんのヴォーカルはイヤフォンには結構厳しく、ノイジーに聞こえることが多い。
この曲はピアノたっぷりでさらに分離が厳しい。 この曲を気持ちよく聴けるかはまさに試金石。
flow
シンセサウンドがかなりノイジーで、ヴォーカルも割と刺さりやすいので、安いイヤフォンなんかだと最も厳しいテスト。
本当にめちゃくちゃつらい。音量下げても痛いことが多いレベルで厳しい。 さらに実はドラムとベースも相当刺さるミックスになっていてヘッドフォンでもdisqualifiedしやすい。
ハマルの幸福
ギターがない部分はそこまで難易度高くなく、基本的な分離能力が測れる。
ギターがある部分はヴォーカルと成分が被っていて、かなり厳しく中域分離が求められる。
女性ヴォーカルの伸びを見るテストを兼ねている。
SELENiTE
めちゃくちゃトラック数が多く、全域超高密度。 しかもダイナミクスがしっかりついていて、意識の行っていない音は聴こえてないになりやすい。
「どの音がちゃんと聴こえるか」が問われる。 高音まで密度が高い曲は結構珍しい。
Golf
メタル代表その1。
楽器を立てるミックスなので割と刺さりやすい。特に音量大きめだとめちゃくちゃきつい。
ものすごく速いフレーズも多いのでキレの良さも要求される。 潰れやすくて難しい楽曲。
Lyin’ 2 Me
メタル代表その2。
重低音テスト。ノリノリやドラムやギターを気持ちよく聴けるか。 ギターの鳴きを気持ちよく聴けるか。
フレーズが結構速かったりするので、単に「低音に迫力がある」ではダメで、「低音が明瞭に鳴っているか」が求められる。
scent
繊細なピアノ曲。
単に繊細な表現力と「ピアノがきれいに鳴るか」だけではなく、 意外とクリーンではない(というかサスティン多め)ため、音がめっちゃもわもわする。
気持ちよく聴けるかは地味にかなり厳しいテスト。
眠れない
バックは意外と激しい上に重いミックス。 これに対してウィスパーな女性ヴォーカルを前に出したなかなか複雑な構成の楽曲。
そもそも楽曲のミックス自体がうまくできているのでバックとヴォーカルの分離と親和に性能は要求されないんだけど、「バランスよく聴けるか」には性能が要求される。
Lost Child
ウィスパーな女性ヴォーカルとEDM、ワウとディレイと裏拍リズムで「気持ちいいけどぐっちゃぐっちゃ」になりやすい曲。 聴こえない音も出やすい。
ある程度以上のラインは出しやすいという意味で難易度低めのテストだけど、完全に堪能できるかというと難しいテストになる。
真夜中プライスレス
男性ヴォーカルの評価もしないとね。
ファンキーなエレキベース(さらに低い)、金管楽器、男性ヴォーカルの3要素を中心としたテスト。
テスト難易度自体は低い。
Hype
ハードコアフューチャーベース。
「EDMが気持ちよく聴ける」なんて甘っちょろいレベルでは攻略できないゴリゴリのフューチャーベースが襲いかかる。 その上で、上に乗ってるSuchさんのヴォーカルをかき消してもダメ。
「低音が良い」の「質」を問うテスト。
Decay
This is the Trans.
トランスも中域がもわもわしやすいので、気持ちよく聴けるかは結構性能が試される。
さらにこのプレイリストの中で最も低音要素があり、ベースがちゃんと聴こえるか問題もある。
どれくらいのテストであるか
まず、そもそものコンセプトなので、ZVXはどの曲も辛い。とても耳が痛い。 やっぱZVXダメなのでは。
私の手持ちの中から代表的なものを試してみる。 当たり前だけど私が使っている中の代表なので、クオリティが高い製品たちになる。
まずは、この記事を書いてる結構最後のほうまでZVXと間違えていたSaga1。 痛くはなかったのでクリアと見做せなくもものの、実際のところ飽和気味のところで気持ちよく聴けない時間が長く、マスクされてちゃんと聴こえてない音もある。 なのでまぁ、disqualified。
手持ちイヤフォンでリスニング担当してるESX2は余裕のqualified. 密度が高いところでも耳が痛くならず、低音は迫力があって楽しいのでここで挙げるものの中でベストまでありそうな勢い。 このプレイリストは質的な判定よりも「合格できるか」に焦点を置いているから満点なのだけど、厳密にいくと低音は密度高いと若干不明瞭で、GolfやHypeは少しもわもわする。ちゃんとクリアできてはいるものの、SRS-3100と比べると全体的に余裕のないサウンド。 しかし3000円くらいで買ったのに性能バグってるなぁ。
fifine h133だとflowはちょっと痛いし、SELENiTEは盛り上がっているところはちょっと潰れた感じがする。聴きづらい。Golfも結構痛い。 音量を上げると「気持ちよくは聴けない」曲がそれなりに多く、「やや厳しい」に着地する。 わかりやすくこのテストの厳しさが出ている。
普段遣い代表K712 Pro4はさすがにモノ的に越えてくれないと困るやつ。 別に聴くという意味では問題ないんだけど、結構味気ない。いかにもモニターっぽさが出る。 その分刺さりやすい音でも非常にマイルドに聴けるので疲れにくい。逆に言えば迫力はない。 SELENiTEはヴォーカルが埋もれ気味。あんまり高密度すぎると分離もやや厳しいかも。
お仕事用で使っているSignature Studio5はさすがの解像度。どの曲も難なくこなすだけでなく、しっかり音が立つのでミックスが分かりやすく、かつ楽しく聴ける。さらに左右も非常にわかりやすい。定位感とかじゃなく、パンニングパラメータとかのレベルでわかりやすい。 ただそれ故の難点もあって、flowのシンセはそもそもが痛い音をしているため、K712 Proみたいにマイルドにならない分痛い。性能不足による痛さではなく、性能的にちゃんと音が出ているが故の痛さ。攻撃的な音作りをしているとそれがダイレクトに耳に刺さってしまう。 SRS-3100のほうがこのあたりはマイルド。そして、解像度が高すぎてめちゃくちゃ疲れる。そして装着感がタイトなのでそっちでも疲れる。
SRS-31006はどの曲も当たり前に、普通に気持ちよく聴ける。得手不得手もほとんどない。さすが。 STAX、意外とモニターっぽい音なんだよね。ただ、全体的に一体になって聴かせてくるので実際にモニターヘッドフォンとして使えるかというと割と限定的。楽器個別のミックスを聴き取って調整したりするのには向いてない。 「全く問題がない」というのがテスト結果になるわけだけども、非常に余裕のあるクリアであることが特徴的。「まだまだいける」という感じが強い。 また、非常に特徴的な要素がもうひとつ、「音量による聴こえ方の変化が小さい」ということ。 これは音量の自由度の高さになっていると同時に、「終焉のフィナーレ」のような交響曲での表現力に対する再現度にもつながっている。
で、なんで作ったのかというと
CVJ, InAwaken, Tanchjimのイヤフォンを買ったので、その検証用。
果たして値段がバグってるESXを超えることができるのか。
乞うご期待。
KZの1DDイヤフォン。新世代のサウンドとか称賛されている記事をよく見かけた。↩︎
KZの10周年記念モデル。12mmの1DD。2000〜3500円で売られていたが、音質を考えると値段がバグっている。↩︎
fifineのUSBゲーミングヘッドセット。7000〜11000円くらい。fifineの中では上位モデル。↩︎
AKGのプロフェッショナルモニターヘッドフォン。私が購入したときは37200円。比較的安価でメンテナンス性も良いのでプロでも愛用者は多い。↩︎
Ultrasoneのモニターヘッドフォン。同社のハイエンドプロフェッショナルモニターとして君臨していたSignature Proの廉価版として販売された。6万円台。↩︎
STAXのコンデンサーヘッドフォン(彼らの言い方だとイヤースピーカー)。コンデンサーヘッドフォンであるため専用のドライバーユニットが必要で、SRS-3100は入門向けのドライバーとヘッドフォンのセットとなっている。68000円くらい。↩︎