今でもThinkPad X1 Carbon Gen5が最高

2023-08-14

それはなに

ThinkPad X1 CarbonはIBMから継承したLenovoのラップトップシリーズ、ThinkPadの最高峰。

14インチのボディはThinkPadの他モデルにも存在するものではあるが、それらと比べ薄型・軽量のいわゆる「ウルトラブック」と呼ばれるタイプになっているのが特徴。

比較的堅牢なモデルであるThinkPadの中でも、シェルにカーボンを使用し、より強度が高い(と言っているが、私の経験上、X1 Carbonは結構割れる)。

薄型であるため、他の14インチモデルよりもややキーストロークが短い。 もともと他のモデルよりもかなり高級なモデルだったが、近年はより高級化している。

最新が最高じゃない

実はX1 Carbonには迷走問題がある。

2023年現在、X1 CarbonはGen11まで来ているが、私が持っているのは私物のGen5と、会社用のGen8。

X1 CarbonはGen5まで薄型化・軽量化が進む一方でキータッチが悪くなるという問題が発生していた。 年々「去年より悪い」と言われ続けてきたわけだ。

それがGen6で「別に軽くなってないのに、ものすごく打ち心地が悪くなった」と言われ、この「年々悪化していく」傾向に拍車がかかっていった。

また、クリエイター向けを打ち出して4k光沢液晶モデルを出したこともある。 というか、私のGen8は4k光沢液晶モデルである。 ビデオカードを別途持っていないので4kは結構厳しくて、ハードユースに耐えるX1 Carbonの良さが完全に死んでいた。 ちなみに、ディスプレイは現在はWUXGA液晶と2880x1800の非光沢OLEDになっている。

あとまあ、最近のウルトラブックには割とある話なのだけど、最近のはサラウンドスピーカーを持ってたり、多点マイクを持ってたりする。

一方、ThinkPadらしさであったEthernet端子はなくなっている。

というか、ハッキリ言ってしまえば、最新のX1 Carbonは魅力がない。

ThinkPadの良さといえばキーボードの打ち心地だった。 わざわざ外付けThinkPadキーボードを使うくらいに非常に魅力的なタイピングフィールだったのだけど、現在のThinkPadにはそれがない。 毎年悪化しすぎて、もはや他と比べても別によくない。だいぶぺちゃぺちゃした打ち心地。 ThinkPad全体でその傾向であり、X1 Carbonは特にひどい。

Ethernet端子とHDMI端子が存在しているのはハードな使われ方に応える重要なポイントだったはずなのだけど、Ethernetのほうはもうない。

マルチスピーカーのオーディオも使い勝手がよくなくて、もともと音質の悪いThinkPadには余計なもの感がある。

別にすごく悪いとは言わないが、ThinkPad X1 Carbonの良さというものが死んでいるので、別に他のラップトップでいい、というかむしろ他のラップトップのほうが良い問題が発生しているのだ。 私のGen8は動作が非常に不安定なので、なおさら悪く感じる。

依然として最高なGen5

翻ってGen5。2017年モデルである。

CPUはCore i5-7200Uを搭載する。2コア4スレッドで、Passmarkのスコアは3395(シングルスレッド1761)。 現行の1335UはPコアが2コア4スレッド、Eコアが8コア8スレッドでスコアが18601、シングルスレッドは3724。めちゃくちゃ差がある。

この性能をどう評価するかだけど、2年くらい前までは「全然気にならない」だった。 けど、最近はウェブがあまりにも重くなって、Ryzen5 5600X機(21946/3359)でも結構もっさりということが増えたので、さすがに「もっさりするなぁ」と思うことが多い。少なくとも、なるべくページを開かないようにするくらいのものではある。

メモリは8GBだが、とりあえず困らない。 というよりも、CPUがそれだからあまり色々と同時に動かすことがないため、8GBも使わない。

どういう目的が使うかにもよるが、例えばウェブブラウジングなど「観る端末」として見れば魅力的ではないだろう。 だが、「持ち出し用端末」としては素晴らしいのだ。

なんといってもキーボード。 現代ではまず得られないようなキータッチをしている。 2kgくらいある17インチモデルとかならもっといいタッチをしているものもあるけれど、コクコクと心地よいタイピングは別にラップトップのキーボードという割り切りも必要なく、普通に楽しくタイピングできる。

ラップトップを使う理由は基本的には外出時に持っていくためで、じゃあなぜ外出時にラップトップを持っていくかというと、基本的には外で作業をするためである。 私にとって外でやる作業は原稿書きやプログラミングであり、そのほとんどはタイピングを行う時間だ。 特に鮮やかではないノングレアのディスプレイは結構見やすくて、長時間の作業もあまり苦にならない。

また、Gen5はストレージがM.2 2280なのだが、B keyのSATA SSDが利用可能である。 最近はラップトップは当たり前のようにPCIeだけなのだけど、Gen5は128GBストレージがSATA SSDでラインナップされていて、SATA/PCIe両対応。

最近は高性能なSATA SSDも少ないし、基本的にはPCIe SSDのほうが性能は期待できるのだけど、実はSATA SSDを使えることには大きなメリットがある。 それが消費電力だ。PCIe SSDは読み書き時には10Wくらい使い、その消費電力は倍くらい違うので、実は結構な違いになってくる。

このため、最新X1 Carbonの駆動時間は5〜11時間あたりなのに対し、Gen5は10〜25時間とざっくり倍のマイレージ性能を持っている。 泊まりの作業でもなければ基本的にアダプターは必要ない。

14インチというサイズは13.3インチと大きな違いはないように思えるが、実際はスケーリングが変わってくるくらいには違う。 13.3インチでウィンドウタイリングして使うとかなり狭く感じるが、14インチだとあまり気にならない。 14インチで1.1kgというのは現行X1でもそうだが、割とメリットとしては大きい。

もっとも、X1 Carbonの「14インチ1.2kg!」というのは、13.3インチを含めても最軽量クラスだったため、より軽くなってはいないために魅力はかなり薄れたようには感じるが。 ただ、今でも13.3インチが多いため、14インチだと選択の余地が少なく、そこは依然として魅力的なままだ。 キーボードが狭くないというメリットもある。

(その意味でも現行X1 Carbonはなぜかキーボードが少し狭いので、よくない。)

Gen5に関してはトラックポイントの動作が(Linuxでは)あまり自然でなく、この点はGen8に対してかなり劣っている(なんなら、タッチパッドもそんなに自然じゃない)。 とはいえ、タッチパッドはちゃんとクリックできるタイプで、タッチパッドのタップ操作を無効にすることでカーソル飛びを防止することができる。 そして、タッチパッドのクリックポイントはちゃんとセンターを含む3ボタンになっていて、それとは別に3つのボタンを持っているのはThinkPadのとても良いところだ。1

つまり、Gen5が持っている強みは

  • キーボードが非常に打ちやすい
  • トラックパッドも使いやすい
  • 14インチで画面が見やすく、なおかつ携行性も良い
  • バッテリー持ちが大変良い

というそれだけのことである。 だが、外で作業するためのラップトップとしてはこれこそが本質的な部分であり、これらの点で劣るラップトップはどれほど性能がよくても優れているとは言えない。 現行X1 Carbonはこの中からキーボードとバッテリー持ちを失っているため、買い替える気にならない。

作業機としてはめちゃくちゃ優秀で、現行モデルでここまで快適な作業環境を組むことは困難。 性能が必要な部分はデスクトップでやれば良く、外にいる時間にやるべきことをしっかり切り分けられていればそれほど不自由を感じないため、現代の性能の向上よりも快適な作業ができるメリットのほうが大きい。

そろそろギリギリではある

「ラップトップでウェブを見ることは少ないから」という理由で許容できているが、そろそろ限界が近づきつつはある。

最近はウェブブラウザそのものがだいぶ重くなってきていて、Gen5だとブラウザを立ち上げるのが割と億劫。 しかし、プログラミングでは公式リファレンスを読みたかったりするし、書物でも資料を調べたりするため、ウェブブラウザ割と使うのである。

ウェブページの話をすると、るびまとかMDNとかは軽いのでそこまで気にならないけど、その手前のGoogle検索はそこそこ重いし、DeepLはだいぶ重いのでDeepLの立ち上がりがもっさりしていると割と思うところはある。

もっと根本的に言えば、Gen5はラップトップの処理性能は「まぁ、こんなもんだね」というような感覚だった頃で、処理性能が欲しいならデスクトップにすべきだった。 (といっても実際にデスクトップを買う人は少なかったけど。) Gen8の第10世代Intel Core-iはあまりうまくいっていないプロセッサで、AMD Ryzenとの間にはそこそこの差があった。 といっても、Ryzen7 3700UだってデスクトップCPUとの差はすさまじく大きかったから、「ラップトップも結構快適になってきた」くらいのレベルだったのである。 それが、翌年にAppleが出してきたM1で状況は一変する。M1はデスクトッププロセッサとどちらが優れているかと論じられた(無理がある話ではあるが)くらいで、ラップトッププロセッサとは比べるべくもなかった。

この影響もあって、ラップトッププロセッサに関してはものすごく性能が上がった。 その代わり実用上のバッテリーマイレージはかなり落ちたけれど、それはその前からその兆候はあったし、とにかく現在のラップトップはめちゃくちゃ速いのだ。

私が持っているラップトップにRyzen7 5800U搭載モデルがあり、このプロセッサの性能は1335Uとだいたい同じくらい。 5800Uはpowersave governerだと7200Uよりちょっとだけ快適程度のものだけど、schedutilsにするともっさり感が全くなく、サクサク動作。 HIDが死んでるので快適性は皆無だけど、体験は相当違う。

少しフォローすると、(Core i5) 7200Uのperformanceよりも(Ryzen7) 5800Uや(Core i7) 10610Uのpowersaveのほうがバッテリー的には厳しいため、Gen5のほうは常時performance運用する前提にすれば多少は差が詰まるけれど、別にこれは随時切り替えられるものなので、パフォーマンスがほしい瞬間に性能を出せるかどうかは割と大きい。

今後処理性能はさらに上がっていくわけだけども、最新環境でないともっさりするという傾向が続くウェブブラウザはそれに従ってさらに重くなっていくと考えられ、そうなってくると使いづらさが目立ち始めるだろう。 現状でもCode OSS(プロプライエタリ版はVSCode)に少しもっさり感があり、各種アプリもウェブブラウザ(特にChromium)をベースとしたものが増加傾向なので、アプリ自体にもっさり感を感じるようになってくると結構厳しい。 もちろん、ウェブページは際限なく重くなっている状態で、考えるまでもなく調べものはつらくなっていく。

現状を考えると少なくともあと数年は工夫次第でやっていけるけど、やがては「遅すぎてきつい」というときが来る感じはする。

13.3インチでいいなら現行のLaVieやDynabookは非常に良いキーを持っていたりする(さすがにGen5ほどではないけれど、現行ThinkPadよりはずっと良い)し、キーボードはそこまで良くはないけれどLGのGramは非光沢ディスプレイになって非常に優秀な端末になったので、絶望するほどの状況ではないのだけど、それでもラップトップとして一番大事なところを持っているのはGen5という感じがするため、本当にギリギリまで買い替えないでいくだろう。