CR-X Delsol

2021-05-07

まず、前提としてCR-Xについても誤解があると思う。

CR-Xは基本的にシビックより運動性は低い(限界性能が低いので少なくともサーキットではシビックのほうが適している)ので、別に「CR-Xのほうがスポーティ」ということはなかった。 ただ、とにかく短いので峠が攻めやすいし、安定感がないから官能的にはスポーティではある。

デルソルはEGシビック世代のCR-Xだけど、シビックより刺激的な従来型と違って、シビックよりも穏やかで付加価値の大きいクルマになった。 そのこと自体が批判になるのはわからないでもない。

ただ、そもそも従来型CR-Xを継続することはできなかったし、もし従来のようなCR-Xでなければ許さない、という話であれば、もうCR-Xそのものをやめるしかなかったということになると思う。

有力な説、というか一般によく言われているのは、アメリカの保険制度のためにCR-Xのようなクルマだと若者が買えないから、そういうクルマじゃないんですよ、と示す必要があった、ということだけど、これはどうなんだろう。 しかし、それとは別に、日本でももう受け入れられなくなっていた、という面もある。

そもそもバブル期、ホンダは結構反社会的なクルマを売り出していた。 SM-Xとかプレリュードとかもそうだし、「峠スペシャル」なCR-Xもそういうタイプのもの。 ステップワゴンが「人攫い用のクルマになった」というのもあるけど、それは多分関係ない。単純に使い方の問題。 でも、そもそも「社会的でない使い方を想定したクルマ」を結構作っていた。

ただ、90年代に入ろうとする頃には、そういうことに対して風当たりがつよくなってきていて、「不良がかっこいい」という時代も終わっていく。 そういう中で、「峠でぶっ飛ばすためのクルマ」というコンセプトで次の世代を担えないのは割と明らかだった。

もうひとつはロードスターの存在。

どこまでが事実かは分からないけど、ロードスター以前は「軽量小型のオープンカー」って本当に少なかったので、ロードスターのヒットは大きく影響を与えているとは思う。 Z3やSLKも影響を受けた説もあるし、本家ロータスがガチすぎるエリーゼを作ったのも関係はあるだろうし、MR-Sも「ロードスター的な」路線変更だし、ボクスターだってそうかもしれない。 その中でデルソルは、かなり早い段階で「ロードスター的な」路線に舵を切っている。

トランストップの格納機構はものすごいもので、今みたいなスタイリッシュな格納が実現できなかった時代に電動ハードトップを実現する方法としては発想もすごいし、確かになるほど、と思うものでもある。

ただ、オープンにしたところで、タルガトップ程度でしかなく、あんまりオープンエア感もない。小型でかなりスポーティなクルマで、おしゃれでオープン、といいとこ取りに見えるのだけど、オープンという部分に関しては割と微妙。リアウィンドウは開閉可能で、リヤウィンドウを開ければオープンエア感はあるんだけど、オープンの楽しさに関してはロードスターとはだいぶ差がある。 手動オープンのほうがアルミでだいぶ軽いので、あえてSiRのマニュアルオープンルーフという選択もあったかもしれない。中古車市場を見るに、多分そんな選択をした人はほとんどいないけど。

NAロードスターはすぐボロボロになる幌を備えていたので、ハードトップというのは結構魅力だと思うのだけど、当時は魅力的なスポーツカーが色々あったので、その魅力に気づくのはかなり難しかっただろうとは思う。 剛性がしっかりしていて、雨漏りもないオープンカーで、そこそこオープンエア感も楽しめて、走りはかなりスポーティ。基本的に良いクルマなんだけど、マニアックなクルマだし、今は普通のありふれたクルマばかりで、車好きはマニアックなクルマを求めてるからかなりぶっ飛んだクルマでも少なくとも注目はされるけど、当時はまだそこまで成熟していなかったし、選択肢が豊富な環境でマニアックなクルマはそんなにウケなかった、というのは当たり前の話のような気がする。

あと、走り屋みたいな過激系スポーツカー市場が縮小傾向にあるからといって、「小型ツーシーターオープンカー」というさらにマニアックな市場がそれよりも大きいということもなく、そういうのが好きな人はだいたいもうロードスターを手にしている92年の発売。

条件の割には売れたほうだと思う。